アーユルヴェーダの料理に欠かせないオイルのひとつ、「ギー」。無塩バターをゆっくり加熱し、水分や乳固形分を取り除いて作る、澄んだ黄金色のオイルです。アーユルヴェーダでは古くから、食事にもさまざまなケアにも用いられてきました。「作るのが難しそう」と思われがちですが、材料は無塩バターだけ。泡の大きさや音の変化を観察しながら、家庭でも作ることができます。
今回は、ギーの基本の作り方から、失敗しないためのポイント、保存方法、毎日の料理での使い方までご紹介します。
ギーとは? バターとの違い
ギーは、バターを加熱して水分を飛ばし、乳固形分を取り除いた油脂です。バターのような豊かな香りがありながら、澄んだ黄金色で、料理に加えると独特のまろやかさとコクが生まれます。
アーユルヴェーダでは、ギーは油性や滑らかさを持つ食材として大切にされてきました。乾燥しやすい季節の食事や、温かいスープ、穀物料理などにもよく使われます。
ただし、ギーも油脂のひとつ。誰にでも、どんな量でも適しているというわけではありません。大切なのは、今の自分の消化力や食事全体のバランスを観察しながら、必要な分を取り入れることです。
お家で作るギー。無塩バターから始めてみよう
ギーは市販品もありますが、自分で作ると、加熱とともに変わっていく香りや色、泡の様子まで楽しめます。まずはこちらの動画をご覧ください。
動画を見ると一目瞭然ですが、文章でも詳しく説明していきますね。
用意するもの
材料
- 無塩バター 450g(よつ葉など)
道具
- 琺瑯など、底の様子が見やすい小鍋
- 耐熱のボウル
- ざる
- 食品用のろ過ペーパー
- 清潔で乾いた耐熱保存瓶
※バターの量は、普段使う鍋の大きさに合わせて調整できます。初めての方は、ある程度まとまった量で作ると、泡や音の変化を観察しやすくなります。
ギーの作り方
① 無塩バターを鍋に入れて加熱する
小鍋に無塩バターを入れ、中弱火にかけます。まずはバターが溶けるまで、ゆっくり待ちましょう。
② 大きな泡が出てくる
バターが溶けると、表面に泡が出始めます。あくのようなものが浮いてきますが、気になるようなら軽く取り除く程度で大丈夫。大きな泡が出てきたら火を弱め、焦がさないように加熱を続けます。
③ 泡と音の変化を観察する
しばらくすると、大きかった泡がだんだん細かくなってきます。最初はボコボコと聞こえていた音も、少しずつ静かになっていきます。この変化が、ギー作りで大切なポイント。水分が減っていくにつれて、泡の出方や音、香りが変わっていきます。
④ 小さな泡になり、澄んだ黄金色になったら火を止める
泡がとても細かくなり、音が静かになってきたら、鍋の中をよく観察します。油が澄んだ黄金色になり、底の乳固形分が薄いきつね色になってきたら、火を止める目安です。火を止めたあとも余熱で加熱が進むので、焦がしすぎないように注意しましょう。
⑤ ゆっくり濾す
ざるに食品用のろ過ペーパーを敷き、耐熱のボウルへ静かに濾します。ペーパーを絞らず、自然に濾されるのを待ちましょう。粗熱が取れたら、清潔で乾いた耐熱保存瓶に移します。これで、手作りギーの完成です。
ギー作りで失敗しないためのポイント

初めて作るときは、火を止めるタイミングが少し難しいかもしれません。でも、毎回同じ鍋・同じ量のバターで作ってみると、変化の様子が少しずつ分かってきます。
特に気をつけたいのは、水分と火加減です。鍋やボウル、保存瓶は、使う前によく洗い、十分に乾かしておきましょう。加熱中は鍋から離れず、泡の大きさ、音、香り、色を観察します。「何分加熱する」と時間だけで判断するより、目の前のギーがどう変化しているかを見ることが大切です。
これは、アーユルヴェーダの料理にも通じるところ。レシピに書かれた数字だけではなく、食材の変化を自分の目や耳、鼻で感じてみてください。
手作りギーの保存方法
ギーは水分や乳固形分を取り除いて作るため、バターとは性質が異なります。ただし、家庭で手作りする場合は、加熱やろ過の状態、容器の清潔さ、保存環境によって品質が変わります。手作りギーは、清潔で乾いた密閉容器に入れ、冷蔵庫で保存するのが安心です。使うときは必ず清潔で乾いたスプーンを使い、水分や食べ物が混ざらないようにしましょう。一度に大量に作って長期間保存するより、家庭で使い切りやすい量を作るのがおすすめです。異臭やカビなど、いつもと違う状態が見られた場合は使用を控えてください。
ギーの使い方|毎日の料理に取り入れてみよう
ギーを作ったら、まずはいつもの料理に少し加えてみましょう。特別なアーユルヴェーダ料理を作らなくても、普段の食卓で十分に楽しめます。
① スープや味噌汁の仕上げに
私の一番のおすすめは、温かいスープの仕上げに使うこと。シンプルな野菜スープに少量のギーを加えるだけで、香りとコクが生まれます。洋風のスープだけでなく、実は味噌汁にもよく合います。クミンシードやフェンネルシードなどをギーで温め、香りが立ったところでスープに加える「テンパリング」もおすすめ。いつものスープが、少し違った味わいになります。
② 焼きたてのパンに塗る
ギーはパンに塗って食べてもおいしいオイルです。焼きたてのパンに少し塗ると、バターとはまた違った香ばしさと、まろやかな風味が楽しめます。乾いた食べ物には油性を補って食べるのもアーユルヴェーダ料理。パンもギーたっぷりで美味しく食べましょう。
③ ターメリックミルクに加える
寒い日や、温かい飲み物でほっとしたいときには、ターメリックミルクもおすすめです。
材料(1杯分)
- 牛乳 200ml
- ターメリックパウダー 小さじ1/4
- ギー 小さじ1
作り方
牛乳を小鍋で温め、ターメリックパウダーを加えてよく混ぜます。仕上げにギーを加え、温かいうちにいただく、これだけ。ターメリックミルクは黄金色の、やさしい味わいの飲み物です。牛乳やギーの量は、好みやその日の食事に合わせて調整してください。
④ ごはんや豆料理にも
ギーは、キチュリやダールなどの豆料理、炊きたてのごはんともよく合います。少量を仕上げに加えたり、スパイスを温めるときの油として使ったり。まずはいつもの料理の油を一部ギーに置き換えるところから始めてみてください。

アーユルヴェーダでは、ギーをどう考える?
アーユルヴェーダでは、ギーは古くから食事や専門的な施術などに用いられてきました。油性や滑らかさを持ち、滋養を与えることをはじめとして、さまざまな効果効能が認められています。
ただし、アーユルヴェーダの食事は「良いとされる食材をたくさん食べればよい」というものではありません。同じギーでも、その人の消化力や状態、季節、食べ方によって適した量や使い方は変わります。ギーもまた、今の自分を観察しながら選ぶ食材のひとつです。
なお、伝統的な施術にはギーを目や鼻などに用いる方法もありますが、家庭で作った食用ギーを自己判断で目や鼻、傷口に使用することはおすすめしません。
まずは毎日の食事の中で、その香りや味わいを楽しむ、というのがeatreat.のおすすめです。
まずは一瓶、台所にギーを
初めてのギー作りでは、火を止めるタイミングに迷ったり、少し焦がしてしまったりすることもあるかもしれません。でも、泡の大きさや音、香りの変化を観察しながら作る時間そのものも、台所の学び。自分で作ったギーを、スープにひとさじ。あるいは、焼きたてのパンに少し。そんな小さなところから、アーユルヴェーダを毎日の暮らしに取り入れてみてくださいね。
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