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ギーの使い方とアーユルヴェーダでの性質|アーユルヴェーダ薬膳食材①

アーユルヴェーダの料理を始めたいと思ったら、まず揃えてほしいものがあります。それが「ギー」。無塩バターから水分や乳固形分を取り除いて作る、黄金色のオイルです。

私はギーの味が大好き。バターに似ているけれど、もっとまろやかで、甘く、口の中に広がる香りがとても豊か。料理に少し加えるだけで、いつものスープやご飯がぐっとおいしくなります。

この「アーユルヴェーダ薬膳食材」シリーズでは、身近な食材からアーユルヴェーダの知恵を紹介しています。第1回は、アーユルヴェーダの食卓に欠かせないギーについて。伝統的に考えられている性質や、私が普段どんなふうに使っているかをご紹介します。

ギーとは? アーユルヴェーダで大切にされるオイル

ギーは、無塩バターを加熱して、水分や乳固形分を取り除いたオイルです。インドでは古くから料理に使われ、アーユルヴェーダでも特別な存在として扱われてきました。

アーユルヴェーダでは、ギーは「冷性・重性・油性・柔性」という性質を持つと考えます。身体に潤いを与え、熱を鎮め、滋養する。この性質から、食事だけでなく、伝統的なケアにも用いられてきました。

ギーを眺めていると、その考え方にも納得してしまいます。満月のような金色で、柔らかく、しっとりとしている。アーユルヴェーダで生命の活力や滋養と関わる「オージャス」を考えるときにも、ギーはよく登場する食材です。

アーユルヴェーダで考えるギーの性質

ギーについて、私が料理教室でよくお伝えするのは、次のような特徴です。

冷性

アーユルヴェーダでは、ギーは熱を鎮める性質を持つと考えます。例えば、辛味の強い料理にギーを加えると、味わいがまろやかになります。熱い性質を持つピッタを意識するときにも、よく選ばれるオイルです。

油性・柔性

乾燥したものに油分を補い、しっとりと柔らかくする性質です。パサつきやすい食材にギーを加えると、食感がなめらかになり、口当たりもよくなります。同じように、食べると体内で乾燥していた部分が潤い、例えば乾燥性の便秘が和らいだりすることも。

重性・滋養

その重性から、摂ると心身に安定感が生まれ、不安だった人の心が安定する作用も。また、ギーは、身体を滋養する食材として大切にされてきました。ただし、よいものだからといって、たくさん食べればよいわけではありません。油ですから、使う量は食事全体のバランスや、その日の消化の状態に合わせて考えます。

アヌパーナとしての役割

アーユルヴェーダには、食材や生薬とともに用いる「アヌパーナ」(補佐剤)という考え方があります。ギーもそのひとつとして使われ、スパイスやハーブと組み合わせて摂るとより効果的に。

例えば、クミンシードをギーでテンパリングする。スパイスの香りが油に移り、料理全体に広がるだけでなく、クミンの効果効能が届いて欲しいところに届きやすくなる。食材の性質だけでなく、何と組み合わせ、どう調理するか。そこまで考えるのが、アーユルヴェーダの料理の面白いところです。

ギーの効果・効能は上記にとどまらず、本当にたくさんあるのですが、分かりやすいところをご紹介しました。「ただのバターなのかな?」という印象をお持ちの方も多いかもしれないですが、そんなことはない!アーユルヴェーダ料理を始めるときに、まずは手に入れてほしいアイテムNo.1です。

ギーは買うより手作りがおすすめ

最近では、日本のスーパーや輸入食品店でもギーを見かけるようになりました。海外製品や国産のギーもあり、以前よりずっと手に入りやすくなっています。でも、私はやっぱり手作りのギーが好き。できたてのギーには、市販品とはまた違う、甘くて豊かな香りがあります。特に、焚き火で作るギーは格別。火のそばでゆっくりとバターが変化していく様子を眺める時間も含めて、ギー作りが好きなのかもしれません。

焚き火で作るギーは特に美味しい

ギー作りで大切にしていること

ギーを日本で作るなら、無塩バターを加熱して作るのが簡単。インドでは牛乳を常温で管理し、その上澄みから作るといった工程を踏むのですが、日本ではできないので、まずはブロックの無塩バターを買ってきましょう。

そして、ギーの作り方はとてもシンプルな工程ですが、火加減と引き上げるタイミングが大切です。

私が気をつけているのは、次の3つ。

  • できるだけ同じ鍋、同じ量のバターで作り、変化を覚えること
  • 泡や音、香りの変化をよく観察すること
  • 弱火にしすぎず、強火にもなりすぎないよう火加減を調整すること

そして、完成が近づいたときに見えてくるのが、私が「雪景色」と呼んでいる状態。鍋の中の様子が変わり、その景色がほんのり黄色く色づいてきたら、引き上げるタイミングです。

何度か作っていると、音や香りでも変化が分かるようになります。詳しい工程と動画は、別の記事で紹介しています。

[関連記事:ギーの作り方と使い方]

インドのギーと、日本で作るギー

ギーについて学んでいると、原料となる乳の違いも興味深いテーマです。インドには、牛乳から作るギーも、水牛の乳から作るギーもあります。

アーユルヴェーダでは、水牛とその他の牛の乳を同じものとは考えず、それぞれ異なる性質を持つものとして扱います。伝統的には、牛の乳はサトヴィックな性質と結びつけられ、滋養を与えるものとして大切にされてきました。

一方、水牛の乳は、より濃厚で重い性質を持つものとして説明されます。原料が違えば、ギーの風味や口当たりも変わります。

とはいえ、日本でギーを作るために、わざわざ水牛の乳を探す必要はありません。まずは身近な無塩バターで作ってみる。それだけでも、普段の食卓にアーユルヴェーダの知恵を取り入れる、十分に楽しい一歩になると思います。

ギーのおいしい使い方|毎日の食卓でできる5つのアイデア

ギーを作ってみたものの、何に使ったらいいか分からない。料理教室でも、そんな声をよく聞きます。難しく考える必要はありません。普段バターや油を使っているところを、ギーに替えてみるだけでも、料理の印象が変わります。

① パンに塗る

いちばん簡単なのは、トーストに塗ること。焼きたてのパンにギーをのせると、じんわりと溶けて、香りが広がります。ホットサンドを作るときに使うのもおすすめ。ギーの甘い香りが、パンによく合うし、パンの乾燥を和らげて消化を助けてくれます。

② ホットミルクに入れる

温めた牛乳にギーを少し加え、ターメリックパウダーをぱらぱら。これで、アーユルヴェーダでも親しまれているゴールデンミルクのでき上がり。夕方のおやつ代わりや、夜にほっと一息つきたいときに、私もよく作ります。ミルクのまろやかさに、ギーの香りが重なるのが好きです。

③ スープや味噌汁の仕上げに

野菜スープの仕上げに、ギーをひとさじ。シンプルなスープでも、ぐっとコクが出ます。とうもろこしの入った味噌汁なら、コーンバターのような味わいに。豚汁に加えてもおいしい。いつもの汁物が、少し贅沢な一杯になります。

④ カレーやテンパリングに使う

スパイス料理には、ぜひ使ってほしいです。私が特におすすめするのは、シンプルなダルカレーの仕上げに使うテンパリング。ギーでスパイスを温め、その香りをオイルに移して、カレーに加えます。辛味のある料理にギーの甘さが加わると、味わいがまろやかになります。サンバルにもよく合います。プラウやレモンライス、バスマティライスを炒めるときに使うのもおすすめです。ギーの香りをまとったご飯は、冷めてもおいしい。

⑤ スキンケアに使う

ギーは、インドでは伝統的なスキンケアにも用いられてきました。食べるためのオイルが、肌に使われるというのは、初めて聞くと意外かもしれません。ギーをスキンケアに取り入れると、肌がふっくらして、赤みやニキビ跡などが綺麗になるなど、嬉しいことがたくさん。

ただし、家庭で作った食用ギーは、衛生管理や保存状態が化粧品とは異なります。肌に使う場合は、スキンケア用に適切に製造された製品を選び、肌に合うか確認してください。

ギー、米油、ココナッツオイル。どう使い分ける?

料理教室で時々聞かれるのが、「静香さんは、ギーとココナッツオイル、そのほかのオイルをどう使い分けていますか?」という質問。確かに、同じ料理でも、どの油を使うかによって風味や食べたときの印象が変わります。私の場合は、こんなふうに使い分けています。

米油

一番香りが控えめなので、スパイスそのものの香りを尊重したいとき。しっかりテンパリングして、スパイスの個性を出したい料理によく使います。

ギー

甘く、しっとりとして、人を安心させるような味。辛味の効いた料理の仕上げに使って、味をまろやかにしたいとき。スープの野菜を炒めるときや、バスマティライスをしっとり仕上げたいときにも選びます。

ココナッツオイル

アーユルヴェーダでは、ギーと同じく冷性を持つオイルとして考えられています。ただし、瓶に入れたココナッツオイルが常温でおいておいても、透明でさらさらになる季節だけが、体の中に入れてちょうどいいタイミング。とおぼえるとわかりやすい。

ギーのような濃厚な甘さとは違って、さらっとした仕上がりにしたいときに便利。サラダに合わせるテンパリングにもよく使います。

太白ごま油

アーユルヴェーダでは、ごま油は重性とされています。そのため、セルフケアにはよく使われるオイルですが、食用にすると少々重たい。よって、私はお店の料理にはあまり使いません。

一方、先生によっては、日本人にとって胡麻は慣れ親しんだ食材だから消化しやすい、とおっしゃる方もいます。消化力に応じて判断すれば良いことなので、ご自身の体感を優先されてください。

どのオイルが正解ということではなく、季節や料理、食べる人の状態に合わせて選ぶことが大切だと思います。

まずはギーを台所に

アーユルヴェーダ料理を始めようと思った人に、私がまず「いの一番」に揃えてほしいもの。それがギーです。

初めて食べるときには、どんな味なのか想像がつかないかもしれません。でも、できたてのギーをひと口味わうと、きっと印象が変わると思います。バターから生まれる、あの甘くて豊かな香り。

そして、いつものスープやご飯が、ギーを少し加えるだけで驚くほどおいしくなること。アーユルヴェーダの食事は、特別な食材をたくさん揃えなくても始められます。

まずは、いつもの料理に使う油を少し替えてみる。そんな小さな工夫から、季節や自分の身体に合わせて食べる楽しさが広がっていきます。

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無塩バターからギーを作る工程を、動画とともに詳しく紹介しています。

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