それぞれの人が持つ体質を考慮し、季節や年齢に応じて心身のバランスをととのえるアーユルヴェーダの料理。
日常の食卓にその考え方を取り入れることで、季節の変わり目にも風邪をひきにくくなったり、花粉症などのアレルギー症状が治ったり。便秘や頭痛、生理痛など、ずっと治らないと思っていた不定愁訴もいつの間にか楽にすることができます。
ただアーユルヴェーダを体系的に理解してないと、食事療法はどうしたらいいのか、ちょっと想像がつきづらいかも。何から始めたら良いのか。日本の食卓に馴染みやすいのか?不安に思っている方のために、身近な食材で食卓に取り入れるだけで「もうアーユルヴェーダ!」と言えるものを代表的な食材ごとにご紹介していきます。簡単なレシピのアイディアも載せておきますので、気軽な気持ちでやってみてくださいね。これでご自宅で気軽に「アーユルヴェーダ薬膳」にトライできますよ。
第2回目は「岩塩」です。

アーユルヴェーダでは薬として処方される「岩塩」
料理を美味しく作ることに欠かせないのが「塩」日本の食卓にある塩は海塩の場合がほとんどではないでしょうか。嗜好品の一部として楽しむこともできるので、世界のさまざまな塩をコレクションする方もいると思います。塩は大きく分けて精製塩と自然塩があります。精製塩は食塩や食卓塩などで、電気分解によってナトリウムを抽出し、煮詰めて塩の結晶を作られます。この精製塩にはナトリウムは入っていません。一方で、自然塩は地中や海中などの自然塩から抽出して作りますので、塩化ナトリウム以外にもミネラルが多く含まれ、味に甘味や苦味が含まれています。
自然塩には日本の食卓でお馴染みの海塩以外にも岩塩があります。アーユルヴェーダでは塩といえば岩塩!岩塩はアーユルヴェーダにおいて、薬として処方されることもある有益な食材の1つです。
アーユルヴェーダの古典書「チャラカ・サンヒター」には次のように紹介されています。
最上の塩である、食欲増進、消化力増進、強精、視力向上、灼熱感を起こさない、3ドーシャ鎮静、軽度甘味の性質と作用がある。
岩塩は塩味でも、Pittaを増悪せず、身体を滋養する
アーユルヴェーダには6つの「味」(ラサ)があり、この味がそれぞれのドーシャとどのような関係性にあり、性質についての記述があり、その結果、その味を摂ることによって心身にどのような影響を与えるかが決まっています。
六味は甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味の構成で、塩は当然のことながら「塩味」に該当します。
- 冷性の味…甘味・苦味・渋味
体内の熱をクールダウンする冷性の3つの味。その中でも、滋養する効果を持っているのは甘味です。
この甘味はグラニュー糖などの精製された調味料ではなく、食材そのものやギーが持つ甘みを指しており、人の身体を健やかに構成し、オージャスを生成します。
一方、滋養する効果はないけれどクールダウンの効果があるのが苦味・渋味です。
特に苦味は動物にとって「毒」ですが、その分、デトックスの効果があり、人間は年齢を重ねるにつれてこの毒でもある苦味を必要と感じるようになります。渋味も収斂作用があり、体内のスロータス(経路)を収縮するので、血管や食道などが拡張しすぎた人のそれをリサイズする効果も期待できます。食欲が暴走している時に緑茶などを飲むとちょっとホッとして、そこで食事を抑えることができる、と言えばイメージがつくでしょうか? - 温性の味…酸味・塩味・辛味
消化の火を煽り、熱を産み、エンパワメントするのが温性の3つの味。その中でも、塩味は美味しく料理をする上で欠かすことができません。酸味同様に、あると料理が美味しくなる。ないと今ひとつ、締まりがなくなります。
辛味は「駆風作用」と言って、体内のスロータス(経路)に風を通す作用があるので、便秘や気持ちが滞留している人などには有効で、まさに風が通ったように鬱滞していた便や気持ちを流してくれるでしょう。
そして3つどの味も、身体を温めるのに欠かすことができません。
ただ、摂りすぎはPittaというドーシャを増悪することで熱をこもらせ、Kaphaというドーシャも増悪することでむくみなどを引きおこし、特に塩味と辛味の摂りすぎは精子の質を悪くしたり枯渇させるため、妊娠を望むカップルは男性の塩味と辛味の摂りすぎを控えることを薦めています。炎症に関連した病気に悩む人も、塩味や辛味は控え、甘味を重んじた食材本来の味が生きる食事を心がけると、身体が滋養され回復に向かうと思います。
六味とドーシャ、声質の関係性はとても奥深い話なので、上記はサマリーに過ぎないのですが、塩味は美味しく調理し、食事を楽しむ上で欠かせないものとはいえ、人によっては摂り方に注意が必要で、控えめにすることで心身に対しよりよく働きかけることがわかります。
そんな中、塩味の中でも岩塩だけは冷性で軽性。PittaもKaphaも増悪せず、消化の火を助け、食欲増進・強精し、灼熱感を起こさないとされています。3ドーシャを鎮静し、軽い甘味の性質と作用があるので、アーユルヴェーダの料理といえば岩塩を使うことが良いのです。
色々と理屈っぽく紹介しましたが、実際に精製塩と自然塩を食べ比べたり、自然塩の中でも岩塩とそのほかの塩を食べ比べたり、してみましょう。前者は精製塩には甘味など全く感じられず舌がピリピリする人工的な味がありますし、後者も海塩には海塩の良さがあるのですが鋭性が強く、摂りすぎるとなんだか動悸がしてきそうです。
一方で、岩塩はまろやかでゆっくり舐めると口の中に甘みが広がり、山から採取され、自然なプロセスで洗浄・乾燥されて作られることで含まれるミネラルの素晴らしさを感じられるのではないでしょうか。塩味は料理に欠かせないからこそ、素材の味を尊重し、毎日摂ってもまろやかにアプローチしてくれる、岩塩にしておきたいところです。
岩塩・生姜・レモンで食欲増進&消化促進「食前の生姜」のレシピ
アーユルヴェーダの有名なレシピの一つに「食前の生姜」があります。これは薄切りの生姜に岩塩をパラパラ、レモンを絞って食事の20分前に食べるという処方。その後に食べる食事の食欲を増進させ、消化促進をサポートしてくれます。実際に食べてみると、食欲のムラがあってお腹が空いているのかどうかわからなかった方が空腹を感じたり、消化不良を感じていた方が食事をすっきりと食べてその後の消化も気持ちよくできます。
この食前の生姜に使う岩塩は塩味・生姜は辛味・レモンは酸味です。一つ前の項目の「六味とその作用」を参考にすると、塩味・辛味・酸味はどれも温性で消化の火を煽り、食欲を増進させ、消化をサポートする味です。「食前の生姜」は簡単で誰でもでき、少ない材料で実践できるので、 消化の火が弱い傾向にあり、食欲にもムラが生まれやすい日本の食卓ではぜひやってみてもらいたいレシピです。
一方で、いくら良いレシピと言ってもやりすぎると、元々消化器官に炎症を起こしやすい人や、PittaやKaphaが優勢な人は体内の熱がこもったりむくみが生じるのを感じるかもしれません。胃炎があり胃酸が上がってきやすい人、逆流性食道炎の人にも注意が必要です。でも、消化力にも自信がない。そういう人は、このレシピを実践するときに、せめて岩塩を用いてやってみましょう。酸味も、酸っぱすぎるレモンではなく、少し甘味を含んだ酸っぱめの柑橘でも良いかもしれません。バランスをとって、やってみてくださいね。
※食前の生姜はガリとは違いますので、作り置きはできません。食事の支度をしてる最中にその場で作って、できたてを一枚だけ食べるようにしてください。
岩塩の使い分けは?バスソルトにもおすすめ
岩塩を買い求めようとすると、ピンク・透明・黒の3種類があります。
- 透明
ヒマラヤンソルトの中でも、山の一番上の方でできた透明な塩で、塩味の鋭性は最も強く、少量で十分に効果を発揮します。あんまりアーユルヴェーダレシピとはいえないですが、鯛のお刺身や天ぷらを食べるときに添えたり、カルパッチョに使ったり、甘いお菓子を焼き上げる前にパラパラとかけると料理として効果的です。魚との相性が良いのが透明。 - ピンク
最もバランスが良く、スタンダードなのがピンク色の岩塩。まろやかで香りの強さもちょうど良く、素材の味を邪魔しません。肉魚、野菜、どの食材とも相性が良いですが、特に野菜を調理する時にその良さが分かるのではないでしょうか。アーユルヴェーダの料理を始めよう、と思ったらまず揃えて欲しいのはこの「ピンクソルト」です。ヒマラヤの山の中腹でできます。 - 黒
ルビーソルトと言われる硫黄臭の強い黒い岩塩。山の裾野のマグマに近いところでできるので、温める作用が強く、その硫黄臭から卵や肉類との相性が良いと思います。ステーキを焼いた時の調味や、ゆで卵にかけたりすると美味しいですね。
3つめのルビーソルトは、バスソルトとしておすすめです。発汗を促す作用が強いので、すごく寒い日や、なかなか汗をかけないで困っている人、芯まで冷えてしまった時にバスソルトとして、ロック状になっているルビーソルトをお湯を張ったバスタブに入れて入浴すると、一回の入浴でずいぶん改善されます。amritaraの入浴剤としても、販売されていますが、岩塩専門店でロック状のルビーソルトを購入しても同じ効果が得られますよ。
いかがでしたでしょうか?
たかが塩といえども、岩塩、特にピンクソルトにするだけで料理はまろやかになり、体感は熱すぎず、塩が与えるネガティブなポイントを回避することができます。毎日の食事に欠かせない塩味だからこそ、まずは身体へのインパクトを考えて、マイルドで優しい岩塩を試してみてくださいね。