それぞれの人が持つ体質を考慮し、季節や年齢に応じて心身のバランスをととのえるアーユルヴェーダの料理。
日常の食卓にその考え方を取り入れることで、季節の変わり目にも風邪をひきにくくなったり、花粉症などのアレルギー症状が治ったり。便秘や頭痛、生理痛など、ずっと治らないと思っていた不定愁訴もいつの間にか楽にすることができます。
ただアーユルヴェーダを体系的に理解してないと、食事療法はどうしたらいいのか、ちょっと想像がつきづらいかも。何から始めたら良いのか。日本の食卓に馴染みやすいのか?不安に思っている方のために、身近な食材で食卓に取り入れるだけで「もうアーユルヴェーダ!」と言えるものを代表的な食材ごとにご紹介していきます。簡単なレシピのアイディアも載せておきますので、気軽な気持ちでやってみてくださいね。これでご自宅で気軽に「アーユルヴェーダ薬膳」にトライできますよ。
第一回目は「ギー」です。
ギーは最も良質なアーユルヴェーダ・オイル

アーユルヴェーダのオイルとして、最近ではスーパーでも手に入るようになった「ギー」。これは無塩バターから水分とタンパク質を蒸発させ作るピュアオイル。性質としては「冷性・重性・油性・柔性」と、オージャスそのもの。満月のような金色で、その姿通りに人の心身を柔らかくし、しっとりと保湿し、熱をさまし、安定させる力があります。
具体的には、
- 消化に軽い
- 体内の構成要素を滋養する
- 冷性のため、体内にこもった熱をリリースする
(頭が熱い人、炎症を起こしている人、皮膚疾患など様々なものに有効です) - 油性で保湿し、便通や乾燥肌の改善などが期待できる
- アヌパーナ(補佐剤)として様々な生薬を適切な場所にスムースに運ぶ
(クミンシードをギーでテンパリングして食べると、食欲増進・消化促進効果がよりしっかり期待できるなど)
ギーの効果・効能は上記にとどまらず、本当にたくさんあるのですが、分かりやすいところをご紹介しました。「ただのバターなのかな?」という印象をお持ちの方も多いかもしれないですが、そんなことはない!アーユルヴェーダ料理を始めるときに、まずは手に入れてほしいアイテムNo.1です。
買うこともできるが、手作りがおすすめ
最近は一般的なスーパーでも「GHEE EASY」の取り扱いがあったり、カルディではバリエーションがある店舗も見かけます。Amazonには海外のもの、北海道産など様々なギーのラインナップが。色々購入してみるのもおすすめですが、やっぱり一番美味しいのは手作り。こちらの動画で丁寧に説明していますので、まずはご自身で作ってみましょう。
ポイントは以下の通り。
- 必ず毎回同じ鍋、同じ量のバターで作ること
- 水分とタンパク質を飛ばしていますので、泡がなくなる・音がしなくなるを目安に引き上げること
- 弱火にしすぎると失敗し、強すぎても失敗するので火加減をよく調整する
- 最後、雪景色になり、その景色がほんのり黄色く色づいたら引き上げる!と覚えましょう
ちなみに、インドのギーは全て水牛の乳から作られています。アーユルヴェーダにおいて、水牛は他の牛(インドではコブ牛)とその性質や扱いも異なります。
- 水牛は消化重性。非常に濃厚で滋養があるが、摂りすぎるとタマスになる。実用的な家畜扱いとなります。
- 牛は消化軽性で、冷却作用と滋養効果がある。非常にサトヴィックで神聖な存在なので食用として使うことはない。
日本で手に入る牛のミルクは、水牛のものではないのでそのミルクから作られたバターでギーを作ると、厳密には違うものということになります。だからと言って摂っても意味がないというわけではないので、四つ葉など身近に買える無塩バターでまずは作ってみましょう。気になる方は水牛のミルクを手に入れてまずバターを作り、そこからギーを作るという至難な技に挑戦するか、オンラインで水牛の乳で作られたギーを購入することをおすすめします。
味はとにかく「美味しい」!簡単ギーレシピ

ギーを日本の食卓で手作りするときは無塩バターを買ってきて、水分とタンパク質を飛ばして作りますので、味としては「バター」に限りなく近いのですが、より滑らかで甘く、ピュアな風味が特徴的です。とにかく「美味しい」としか言いようがないのですが、ギーがあるだけで普段バターや他のオイルで仕上げていた料理の風味がさらに良くなります。
ただ、ギーを作ってみたものの、その活用方法がわからないという方は多いですよね。簡単なレシピをいくつかご紹介しますので、参考にしてみてください。
- パンに塗る
トーストを焼いた後のバターの代わりに、ホットサンドを作るときのオイルとしてギーを塗りましょう。バターより軽く、油分を補ってくれますので、パンを食べるとお腹がガスっぽくなる。張ってしまう感じがする。そんな人におすすめです。 - ホットミルクに入れる
ホットミルクにギーを少々、ターメリックパウダーをパラパラすると「ゴールデンミルク」のでき上がり。夜遅くなった時の晩ご飯の代わり、夕方のおやつ代わり、乾燥性便秘に悩む時なんかにおすすめです。 - スープの仕上げに入れる
スープや味噌汁の仕上げにもギーを入れてみましょう。シンプルな野菜スープにもコクが出ますし、とうもろこしの入った味噌汁は「コーンバター」風味、豚汁に加えればさらなる滋養に、簡単なのにとっても美味しくなるギーの摂り方です。 - カレーを作る時のオイルにする
普段普通の米油にしてカレーを作っているところをギーにしてみましょう。おすすめはシンプルなダルカレーの仕上げのテンパリング。サンバルを作る時も、必ずギーにしたほうが美味しい。プラウ(ピラフ)やレモンライス、バスマティライスを炒めて仕上げるご飯の時も、ギーにすると冷めても美味しく、カレーにももちろんよく合います。 - スキンケアに活用する(作りたてのギーに限る)
これは意外かもしれないですが、ギーはインドのアーユルヴェーダ商品を中心とした様々なスキンケアアイテムのベースオイルとして使われていて、スキンケアとして活用してもとっても優秀です。乾燥しているところ、ひび割れているところはもちろん、冷性なのでほてった肌や日焼けの後にも塗るとクールダウンかつ保湿してくれて、肌を心地よく回復させます。夜眠る前に唇にギーをたっぷり塗って、ラップして寝ると、朝には唇の皮膚荒れが治ってるから嬉しくなりますよ。ただし、いくら酸化しづらいとはいえ、肌に直接塗るものなので、ご自身で作ったものを、できた手の状態で使うようにしてください。
他のオイルとの使い分け方は?
料理教室で時々聞かれるのが「静香さんはギーとココナッツオイル、そのほかのオイルをどう使い分けてますか?」ということ。確かにそうですね。
私の使い分け方としては、
- 米油…一番香りが控えめなので、スパイスの香りを尊重してしっかりテンパリングしたい時
- ギー…甘くしっとりとして、人を安心させる味なので、辛味の効いた料理の仕上げに使ってマイルドに。最初の一杯のスープの野菜を炒めるときに。バスマティライスをしっとりさせたい時に。
- ココナッツオイル…ギーと同じく冷性だけど、よりクールダウンする効果が高いので、常温で瓶を置いておいて透明サラサラに溶ける時期だけ食用とする。(ただし大量に使わなければ、多少ほかの季節に使っても大丈夫)甘さやしっとりした感じはギーと違ってないので、さらっと仕上げたいサラダのテンパリングなどに。
といった感じでしょうか?
同じ料理のレシピでも、オイルを使い分けるだけで体感が変わるので、バリエーションとして試してみてください。ちなみに、アーユルヴェーダではセルフケアにとってもよく使われる「太白ごま油」は重性のため、私はあまりお店の料理では使いません。先生方によっては「日本人にとって胡麻は慣れ親しんだ食材だから消化しやすい」とおっしゃる方もいますが、私の体感として重たいため、真冬に天ぷらを自宅で作る時のみ、使うようにしています。
まずはギーから揃えよう
いかがでしたでしょうか?ギーは「アーユルヴェーダ料理を始めよう」と思った人にまず「いの一番」に揃えて欲しいアイテム。食べたことがないと味のイメージがつかない、という方が多いと思いますが、そんな時こそご自身で作ってみることをおすすめします。流通品は本来の味からは少し遠く、手軽に使えるとはいえ、ダイレクトにギーのおいしさを味わうには力不足。今はギーを作りやすい業務用バターも、あちこちで手に入りやすくなっていますので、動画を見て作って、アーユルヴェーダライフを始めてみてくださいね。